15の春を泣かせない!
2人の受験生の物語
受験を控えた2人の生徒がいました。どちらも学校の成績は普通よりも少し上の真面目な女子中学生。受験生Aさんは、自分の望む専門分野のある高校へ行く意思を明確にしていました。早々とその受験校への合格を決めたいと思ったAさんは、面接と内申点のみで評価される「前期選抜」試験の受験をしました。その結果は、競争率が高かったせいもあり、残念ながら不合格となってしまいました。でも、十分成績は良かったので、学力試験の成績だけで合否判定される「後期選抜」試験では確実に合格できることはわかっていました。ところが、彼女の選択は、希望していた高校よりもランクを1つ下げた高校を受験することにしたのです。
一方受験生Bさんは、昨年10月頃、Aさんと同じくらいの成績、その当時は、第一志望を自分の実力相応の志望校に定めていました。でも向上心が強いBさんは、勉強をしているうちに成績はアップし、昨年の12月当時、合格可能性は100%ではないものの、進学校に挑戦することを決意し、志望校のランクを上げ勉学に励んでいました。
果たして結果は??
季節は秋から冬と移り変わり、そして3月9日の後期選抜試験本番も無事受験が終了。3月19日は高校入試の合格発表の日。ついにその瞬間がやってきました。結果は「AさんもB さんも共に合格!」でした。その連絡を受けた私は、本当に良かったと思いました。でも、胸中は複雑です。
A さんは、 初心を貫けば確実に志望校に進学できたはずでした。志望校を1ランク下げた彼女が、もし高校で本来自分がやりたかった勉強ができなかったとしたら、心のどこかで後悔の念が残るのではないかと推察します。一方の B さんは、「 私はレベルの高い仲間たちと一緒に自分を向上させたい」という強い想いを持っていました。その結果、冬の間に大きく学力を伸ばし、見事に志望校への合格を手にすることができたのです。
実はこのストーリーに出てくる2人は、私が学習塾で受験指導をしてきた生徒です。2人とも合格できたことは、挫折ではありません。でも、 本人の喜びの度合いはBさんの方が大きかったことでしょう。
では、この2人の違いはどこから来たのでしょうか? 毎日、計画通りに真面目に学習に取り組むことだったのでしょうか? 合格判定が確実な高校を選択することだったのでしょうか?それとも、生まれつきの頭の良さだったのでしょうか? そのいずれでもありません。2人の違いとは、 志の高さと初心を貫くほんの少しの勇気だったのです。
1978年まで7期務めた故・蜷川虎三京都府知事の言葉に「15の春を泣かせない」というものがあります。受験生本人はもちろん、親・学校関係者にとっても、高校受験は、絶対に失敗できない人生の最初の大きなイベントであり、大きな負担であることは間違いありません。
この2人の生徒のストーリーから、何を感じましたか?
自分ならどうする??
私は、Bさんに私の持っているすべてを出して本気で向き合っていました。そしてBさんの心に明らかに火がついたのです。私の想いに応えるように、冬期講習では、毎日のように塾に通い詰め、いつもの倍のスピードで問題を解いていたことが、ずっと脳裏に焼き付いています。
この受験生の例から、何を学ぶことができたのでしょうか? 私が感じたのは、初心を貫いて自分の目標に向かって進むこと、現状に満足せずコンフォートゾーン(快適領域)を抜け、チャレンジすることの大切さでした。
Congratulations!
3月末に、学習塾で合格者を祝うイベントが有りました。今までで最高人数の参加者が集まり、塾の先生の挨拶の後、クイズやビンゴゲームなどで楽しんでいました。私は、受験生からの感想をしっかり聞きたかったのですが、彼らはそれどころではなかったようです。あるものに夢中でした。 私には、あーなるほど・・と納得の瞬間でした。
それは、、、、ほとんどすべての生徒が合格したお祝いに親に買ってもらった”スマホ”に夢中!! 何かほっこりした気持ちになりました。今度はこの生徒たちを、”学校の勉強に夢中にさせるのが私の役割”だと自覚し、塾を後にし、充実の1日が終わりました。
p.s.
新年度が始まったばかりの先週、前年度の学習の確認のため、”模擬試験”がありました。この生徒達を一人残らず志望校に行かせるぞ!と今から身が引き締まる想いです。