THE CORE FORUM 2025 冬参加レポート

~攻撃的現実主義:ミアシャイマー教授が語る日本の危機と東アジアの生存戦略~

はじめに:

2024年12月13日(土)、東京ビッグサイトにて「THE CORE FORUM 2025 冬」が開催されました。
世界的に著名な国際政治学者、シカゴ大学名誉教授のジョン・ミアシャイマー博士が来日するという貴重な機会でもあり、私自身、強い関心を持って会場に足を運びました。

開会は、主催者である及川幸久さんの挨拶から始まり、続いてワシントン在住の国際政治アナリスト・伊藤貫先生による、ミアシャイマー教授の人物像と理論の紹介がオンラインで行われました。その後、日本の現状と課題をテーマに、伊藤貫先生、参政党代表の神谷宗幣氏、及川幸久氏によるディスカッションが展開されました。

続く基調講演では、ミアシャイマー教授が「日本は世界にどう向き合うべきか」というテーマのもと、国際政治の厳しい現実を率直に語られました。講演後には、その内容を受けた感想セッション、さらに「グローバリズムとリアリズム」をテーマとしたパネルディスカッションが行われ、約5時間に及ぶ知的刺激に満ちた濃密なプログラムは、あっという間に過ぎてしまいました。

以下では、イベントの内容を要点ごとに整理し、最後に私自身の率直な感想を記します。

CORE FORUM 2025 冬のイベント内容:

なぜ今、国際政治の「現実」を直視すべきなのか

本フォーラムは、反グローバリズムの視点から国際情勢を読み解く政治フォーラムとして、今回で4回目の開催となります。中心テーマは、ミアシャイマー教授が提唱する「攻撃的現実主義(Offensive Realism)」です。

この理論は、主著『大国政治の悲劇』が示す通り、国際政治を「理想」ではなく「悲劇的な現実」として捉える立場に立っています。伊藤貫先生は、ミアシャイマー教授が温厚で誠実な人格者である一方、学問においては妥協を許さず、真実の追求を最優先してきた研究者であることを丁寧に紹介されました。

国際政治の真理:生存のための「力の競争」

攻撃的現実主義の核心

国際社会には、国家の上位に君臨する「世界政府」は存在しません。したがって、ある国が侵略されたとしても、必ず助けてもらえる保証はないのが現実です。これこそが、国際政治の前提条件です。他国が今は友好的に見えても、10年後、20年後もそうであるとは限りません。そのため各国は、自国の安全を確保するため、可能な限り国力を強化しようとします。

最良の戦略は「覇権国」になること

この環境下で国家が取り得る最善の戦略は、圧倒的な力を持つこと、すなわち覇権国になることです。弱い国は、強国に利用され、場合によっては消滅すらします。18世紀末のポーランド分割は、その象徴的な歴史的教訓です。歴史上、地域覇権国になれたのは西半球のアメリカだけであり、アメリカは他地域に新たな覇権国が誕生することを阻止してきました。

中国の台頭と東アジアの危機

中国は現在、東アジアにおける地域覇権国になることを目指しています。これは善悪の問題ではなく、生存競争の論理に基づく行動です。かつて日本が1868年から1945年にかけて地域覇権を目指したのも、同じ理由によるものでした。

多極化する世界と米中競争

冷戦後の世界は、二極化から一極化を経て、現在は米・中・露による多極化の時代に入っています。特に21世紀の国際政治は、米中競争を軸に展開され、その主戦場は東アジアです。ミアシャイマー教授は、日本の置かれた状況を「サメが泳ぐ海」に例え、日本は世界で最も危険な地域に位置していると警鐘を鳴らしました。

三つの火種とダブル・コンテインメント

東アジアには、常に戦争の引き金となり得る三つの火種があります。

  1. 東シナ海(尖閣諸島)
  2. 台湾
  3. 南シナ海

伊藤貫先生は、アメリカの対日政策の本質を「ダブル・コンテインメント(二重封じ込め)」と表現しました。日本を完全に独立させず、その日本を使って中国を封じ込めるという戦略です。日米安保第5条が「自動参戦」を保証していない点は、日本の自主防衛の重要性を改めて浮き彫りにしています。

台湾問題と抑止の論理

中国が台湾に固執する理由は、歴史的・感情的要因に加え、第一列島線を突破する軍事的要衝であるからです。教授は、台湾有事を防ぐ最良の方法は、「日米は必ず介入する」という明確な意思を中国に示すことだと述べました。水陸両用作戦は極めて困難であり、中国は日米が本気で介入するなら成功しないと理解しています。したがって、明確な抑止は戦争を招くのではなく、戦争を防ぐための最善策であると強調されました。

日本の生存戦略:イデオロギーを超えて

日本の外交には、① 中国の封じ込め② 東アジアでの戦争回避

という二つの重要な目標があります。

神谷宗幣代表は、日本人の多くが国際政治の現実を理解していない現状を指摘し、80年に及ぶ戦後教育からの脱却と国民意識の変革を訴えました。政治は保守かリベラルかではなく、「国益」を基準に判断すべきであり、生存競争の前ではイデオロギーは意味を持たない――この指摘は強く印象に残りました。

イベント参加後の私の感想:

今回、ミアシャイマー博士がこのタイミングで来日した意味は非常に大きいと感じました。世界が多極化し、日本を取り巻く安全保障環境が急速に悪化する中で、日本は「サメが泳ぐ海」に生きているという現実を、私たちは直視しなければなりません。

日本は歴史上、一度も植民地支配を受けたことのない稀有な国ですが、敗戦後の約7年間の占領によって、「戦わない」「考えない」という精神が深く刷り込まれてしまったように思います。その結果、80年もの間、主体的に国家の存続を語ることを避けてきたのではないでしょうか。

教授が語った、日本復興の条件としての「人口増加」と「経済成長」は、極めて現実的で本質的な指摘でした。国家の存続は、抽象的な理想ではなく、具体的な国力によってのみ支えられます。

今はまさに時代の転換点です。私たち一人ひとりが知識を高め、国家の未来について当たり前のように語れる社会を取り戻すこと――それこそが、今回のフォーラムから私が受け取った最大のメッセージでした。

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