コメ騒動から考える日本の食料安全保障~3冊の書籍を通じて見えた危機~

はじめに
今年の春、突如として「コメ不足」の報道が相次ぎました。その報道を目にした私は、「これはただごとではない」と直感し、急いで近所のスーパーへ。ところが、店の棚に米は一袋も残っておらず、驚きと不安を感じたのを今でも鮮明に覚えています。

そんな中、店の入り口に積まれていたのは「カリフォルニア米」。日本産の米が手に入らないという現実を前に、私はこの問題の本質を知るため、米問題に関する3冊の書籍を手に取り、学び直すことにしました。
今回のブログでは、以下の3冊の書評と私自身の感想を交えながら、今の日本が抱える「食料の危機」について考えてみたいと思います。
- 『食糧戦争』 丸本彰造 著
- 『日本の食糧安全保障とは何か?』 深田萌絵・鈴木宣弘 共著
- 『コメ消滅』 三橋貴明 著
『食糧戦争』丸本彰造著
~食料こそ国家の戦略資源~

本書は、戦後GHQによって焚書にされた貴重な一冊で、戦争と食料の関係を歴史的視点から鋭く描いています。著者は「戦争は食糧に始まり、食糧に終わる」と説き、第一次世界大戦時のドイツで実際に多くの死者を出した飢餓の例を紹介。国家の命運は、食糧事情に大きく左右されることを訴えます。
- 戦前の日本の脆弱な食料体制や、
- 農村振興を国防の基盤と捉える思想、
- 米の減反政策への強い批判などが展開され、
食料の「外国依存」は、まさに「国家主権の喪失」につながると警告しています。
感想
本書は大東亜戦争の時期の提言ですが、現代の食料自給率の低さや食料安全保障の課題を突きつけています。戦時下においての食糧の開発、決戦食生活、食糧と調理といった具体的な項目、また食糧と人生といった精神性を述べた項目まであり、食料自給、備蓄の重要性、そして農村の尊厳を今一度見直すべきだと、強く感じました。
『日本の食糧安全保障とは何か?』深田萌絵・鈴木宣弘共著
~構造的な弱点に潜む罠~

この書籍では、単なる「米不足」や「物価高騰」ではなく、日本農業が抱える構造的問題に焦点を当てています。
- 外資やアメリカ主導の政策による農協や地方農業の弱体化
- 種子法・種苗法・農業基本法改正による弊害
- 国民が「実験台」にされているという衝撃的な指摘
特に印象的だったのは、「日本人の大人しい国民性」が利用され、反対運動も起きないままに、グローバル企業の都合に沿った政策が進められているという点です。
感想
私はこの本の中で、「農業・国土保全協力隊」の提案に共感しました。P154 から抜粋すると”「地方に移住してのんびりしたいけど、何をしていいかわからない」というテーマの曖昧な地域おこし協力隊よりも、職務が明確な「農業・国土保全協力隊」の導入は面白いかもしれないと思います。” との提案です。
地方創生や農業支援の形として、職務が明確な形での政策支援はとても意義があると感じました。そして何より、「食糧は安全保障だ」という視点に初めて気づかされたことが、本書を読んだ最大の収穫です。
『コメ消滅~自民党と財務省が日本国民を飢えさせる!~』三橋貴明著
~「米の消滅」は国家の崩壊~

経済評論家・三橋貴明氏による本書では、「10年後、日本のコメは消滅する」という強烈な警告から始まります。
- 主因は自民党の減反政策と財務省の緊縮財政
- 農家の高齢化と後継者不足
- 制度改悪と外資による種子支配
米の価格を支えるどころか、農政が意図的に「供給力の破壊」に加担してきたという主張は、読み進めるにつれ恐ろしさを増します。
冒頭に書かれた「令和の米騒動は、食糧危機のプロローグにすぎない…」という言葉が、まさに本書全体のテーマを象徴しています。
感想
三橋氏の経済的視点と論理的な分析は非常に説得力がありました。日本の米政策は「減反」と「支援打ち切り」により、農家の持続可能性を根底から崩しています。P328の指摘にあるように、「財政支出なしに食糧自給などありえない」と改めて痛感しました。
私の所感
今回の一連のコメ不足騒動や読書を通じて、私はこれまでいかに「食糧政策」に無関心だったかを痛感しました。
実際、先週合意したトランプ政権との関税交渉で、石破政権は、関税を当初の米国側からの要求の25%から15%へ引き下げ、その代償として米国からのコメの大量輸入を受け入れました。その影響で日本のコメ価格が下がり、生産者の経営はさらに苦しくなっていくのが現状です。
今では、朝の散歩で田園地帯を歩きながら、稲に向かって「ありがとう」と声をかけ、農家の方に出会えば「大変な中ですが、応援しています」と言葉をかけるようになりました。

おわりに:私たち国民の責任とは
美味しいコメが10年後に食べられなくなるかもしれない——。
この危機は、けっして他人事ではなく、私たち国民一人ひとりの問題です。
「日本人の主食を、自分たちの手で守る」。
この意識こそが、政府の政策を変える原動力になるはずです。
今後も、私たちの台所がグローバル企業の都合で壊されないよう、声を上げ続けていきたいと思います。